
腱板とは、肩関節の安定性を保っているインナーマッスルの腱が、板状になっている部分です。この部分を損傷すると、肩の機能が大きく低下します。
【腱板損傷の原因】腕を振り下ろす競技で起こる
腱板損傷には、急性タイプと慢性タイプがあります。急性タイプは、ラグビーなどのコンタクトスポーツや、スキーなど転倒しやすい競技でよく発生します。肩を強打し、上腕が胴体のほうに押しつけられるようなカを受けたときに起こります。
慢性タイプは、腕を高い位置から振り下ろす競技(オーバーヘッドスポーツ)で、振り下ろし動作を繰り返すことで、徐々に発生します。野球、バレーボール、テニス、バドミントンなどの選手によく見られます。
肩のインナーマッスルのうち、棘上筋の腱は、腕を振り上げたときに腱の真上の骨と衝突し、そのために棘上筋を受けやすいと考えられています。棘上筋は、振り下ろし動作の最後に、腕にブレーキをかける役割を果たしています。そのため、振り下ろし動作を繰り返すと、この筋肉は疲労しやすく、腱も損傷を受けやすくなります。
実際、野球の投手では、試合後にはこれらの筋力が明らかに低下し、肩関節の可動範囲も狭くなっています。このような疲労状態で腕の振り上げ動作を行うと、腱板と骨の衝突が普段よりも容易に生じます。
【腱板損傷の症状】腕を振り上げたときに痛む
腕を振り上げたときに、違和感や痛みがあります。これが最も一般的な症状です。腱板の損傷が進むと、インナーマッスルの筋力が低下し、肩関節の安定性が失われたり、動きが不正確になったりします。
このような症状があっても、選手たちは痛みが出ないフォームでプレーを続けてしまいます。振り下ろす腕が本来と異なる下がった位置から出ていることに指導者が気づき、障害が発見されることもあります。
腱板が広範囲に断裂すると、腕が上がらなくなることもあります。若い選手では断裂はまれですが、中高年の野球やテニスの愛好家では起こることもあります。
【腱板損傷の診断】筋力を調べるジョーブテスト
どのような動作で痛みが出るかや、筋カ低下の程度を調べることで、腱板損傷が起きているかどうかを推測できます。
棘上筋のテストとしては「ジョーブテスト」がよく行われます。検査を受ける人は、親指を下に向けて腕を斜め前方に伸ばします。検査する人は、その腕を下に押し下げるようにカを加え、どのくらい抵抗できるかを調べます。
棘上筋腱の損傷があると、軽いカでも耐えられずに腕が下がってしまいます。
腱板がどの程度傷ついているかを調べるには、MRIなどの画像検査が必要です。
【腱板損傷の治療】断裂している場合には手術
軽症の場合は、運動量を減らし、インナーマッスルの柔軟性や筋力を高めるトレーニングを行って様子を見ます。
画像検査で腱板の断裂が明らかで、肩関節の動きに問題が生じている場合には、手術が必要になります。
断裂部分を縫合する手術や、他の部位から筋膜を移植してふさいだりする手術も行われます。最近では、内視鏡手術も行われています。
【腱板損傷の予防】休養してストレッチング
野球の投球動作では、コッキング期に腱板が挟まれてダメージを受けます。また、フォロースルー期には、腕を減速させるために棘下筋が引き伸ばされながらカを発揮し、筋肉の疲労や損傷を引き起こします。腱板損傷を防ぐために、インナーマッスルが疲労で硬くなっているときには、肩関節の休養を取り、ストレッチングなどでケアします。投球後のインナーマッスルの筋力回復には数日間を要することが
あります。十分な間隔を空けて次の練習や試合に臨むようにするべきです。