子供や大人のスポーツ障害の治療の基礎知識

筋の障害~肉離れ、筋挫傷、筋肉痛

肉離れ

筋肉に起こる急性のケガとして、最も身近なのは筋線維が切れる「肉ばなれ」でしょう。外部からの力を受けておこるのではなく、自分の動作や筋力によって筋線維が切れてしまうのです。

肉ばなれを起こすときに発揮されている力は、筋肉が縮もうと短縮するとかこ発生する力(短縮性収縮あるいは求心性収縮)ではなく、伸ばされながら発生する力(伸張性収縮あるいは遠心性収縮)であることがほとんどです。英語では、このような収縮をeccentric contractionと呼び、日本でもエキセントリック収縮という言葉が使われるようになっています。

肉ばなれが最もよく発生するのは、大腿の後ろ側のハムストリングです。その他、大腿の前側の大腿四頭筋、ふくらはぎの勝腹筋にもしばしば見られます。これらの筋肉に共通しているのは、2つ以上の関節を越えて伸びる2関節筋であるということです。2関節筋は、2つの関節の動きの影響で長さの変化が大きく、2つの関節が筋肉に対して同じ作用を及ぼす方向に働くとは限りません。こうした特徴があるために、損傷が起こりやすいと考えられています。

たとえば、ランニング中に接地している脚のハムストリングは、股関節を伸展させるために収縮して力を発生させますが、膝が伸展することで伸ばされます。そのため、伸張性収縮が起こり、肉ばなれが発生しやすくなるのです。

肉ばなれでは、筋線維が急に引っ張られ、ちぎれるように切れます。英語では、muscle strainと表現されます。実際に超音波検査やMRIの画像を見ると、筋線維から腱や腱膜(筋膜)につながる連結部で切れていることがわかります。

力が加わって損傷が生じるときには、力学的に最も弱い部分に損傷が生じると考えられます。筋肉であれば、筋線維の途中で切れるよりも、筋線維と腱などの連結部、つまり伸び縮みの性質の異なる境界部分で、切れるのだと解釈できます。

筋線維が切れたことで生じた隙間には、おそらく血液などの体液がたまります。やがでその中に、腱や腱膜と筋線維をつなげるための線維組織(筋線維とは異なる、腱に近い組織)ができ、隙間が埋められていきます。十分な強度で線維組織ができ、腱刎幽莫と筋線維とがつなげられると、筋肉の収縮に耐えられるようになり、筋腱複合体としての機能が回復します。このように回復するまでの期間はだいだい1ヵ月程度と考えられます。

肉ばなれでも、より強い力が加わったときには、大量の筋が切れることがあります。その場合には、肉ばなれというよりも筋の部分断裂と呼ぶほうが適当です。ハムストリンングや大腿直筋では、1つの筋の半分以上(ときには全体)が切れるような筋断裂が起こることもあります。

筋挫傷

筋肉に外部からの力が加わり、筋肉が押しつぶされるケガが「筋挫傷」です。物とぶつかったり、他の選手の体と衝突したりした場合に起こります。筋挫傷は英語でmuscle contusionと表現されます。

筋挫傷では、筋線維やその周辺にある毛細血管が押しつぶされ、筋の損傷く、血管の損傷による内出血も起こります。そのため、損傷部分の圧力が急激に高くなり、圧力のために筋肉内の血流が途絶えると、強い痛みと筋肉の壊死を招くコンパートメント症候群を引き起こすこともあります。

また、大腿の筋挫傷の項で述べるように、骨の近くで損傷が起こると、骨の周りの本来は骨のない場所に骨ができてしまうことがあります。これを異所性骨化といい、骨化性筋炎という合併症も起こります。

血管の損傷による内出血は、患部を冷やし、圧迫することで最小限にとどめることができます。その意味で、応急処置の基本であるRICE処置を行うことは重要です。

筋肉痛

強いトレーニングなどで起こるいわゆる筋肉痛は、筋の慢性障害と考えることができます。筋肉痛はトレーニングの直後にも起こりますが、数時間から数日後まで、発生期間の範囲もさまざまです。

通常の筋肉痛では、肉ばなれのような筋線維の断裂は起こっていません。しかし、筋線維の内部で筋節構造が壊れていることが、電子顕微鏡による観察でわかっています。また、筋線維の細胞膜の透過性(物質を通す度合い)が変化したり、炎症反応が起こったりすることで、MRIや超音波検査の画像にも色調の変化が現れます。

このような損傷は、筋線維の周囲に存在する筋衛星(サテライト)細胞によって修復されます。

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