スポーツによる障害の中には、神経が損傷されるケガや、神経が摩擦や圧迫により炎症を起こすケガがあります。
神経細胞は軸索突起という非常に長い突起を持っています。この突起が束になり、目に見える太さの神経を構成しています。
神経の損傷には、内部の軸索突起のみの損傷から、神経の束を取り囲む周膜という膜も含めて完全に切れる損傷まであります。神経が強い圧迫を受けた場合には、軸索突起の損傷が起こり、軸索突起内の流れが途絶することがあります(①)。途絶した部位から末梢寄りの軸索突起が壊死することもあります(②)。さらに、軸索が切れてしまう損傷(③)、や、周囲組織や周膜まで損傷されるもの(⑤)もあります。
たとえば、肘の内側の尺骨神経を打撲して手の小指側がしびれても、数分で回復するのは、①タイプの障害だからです。手枕をして眠ったために、手関節や指が伸展できなくなり、回復まで1ヵ月以上かかることがあります。これは②タイプの損傷です。骨折に伴って神経が切れている場合には、⑤の損傷になります。
①~③の損傷は、多くの場合、軸索が自然に回復したり、再生したりして治ります。軸索の再生速度は中枢側ほど速く、末梢では遅くなります。たとえば、肩や肘では1日に5mm程度の速度で再生しますが、手関節では1~2mmです。
また、⑤の場合、軸索が伸びるための道すじも損傷しているので、これが離れていると軸索の再生は起こりません。その場合、神経盛という神経のこぶを作ってしまい、痛みやしびれが残ります。したがって、⑤のような損傷では、神経の周囲の膜を縫い合わせる手術が必要になります。
スポーツでは、関節部分に大きなカが加わることがしばしばあります。その結果、関節が壊れる障害が発生します。
固定を行うことが大切です。それには、サポーター、ブレース、テーピングなどによる圧迫と固定が効果的です。
靭帯が骨から剥がれるように損傷を受けた場合、もし元の付着部に癒合しないと、靭帯にゆるみが残り、不安定な関節になってしまいます。このような後遺症を残さないためには、治療の初期に適切な圧迫を加え、癒合を助けることが大切です。損傷を受けてから数週間以上が経
過し、その時点で圧迫し直しても、不安定性を改善することはできません。 続きを読む
腱は筋肉の収縮力を骨に伝えているだけではなく、自らも伸びることでエネルギーをたくわえ、スポーツの動作にも関係しています。ただ、強度には限界があり、アキレス腱のように強靭な太い腱でも、強い力が加われば切れることがあります。
腱に加わる力と腱の長さ(伸び)との関係は数十年前の研究で明らかになっています。これによると、腱が4%程度伸ばされるとコラーゲン線維の一部が断裂し、8%伸ばされると全体的な断裂が起こるこになっています。
スポーツ選手の日常的なトレ一二ングにおいて、腱がどのくらい伸びているかについては、数%から十数%までさまざまな見解があります。明確なことはわかりませんが、トレーニング中にコラーゲン線維の一部が損傷している可能性はあります。
このようなメカニズムで腱のコラーゲン線維の一部が切れ、それに対する炎症や修復反応が起こっているのが「腱炎」と呼ばれる状熊です。ただ、他の運動器の損傷と異なり、明確な炎症の所見がないことから、「腱炎」よりも「腱症」と呼ぶほうが適切ではないかという意見もあります。
腱の内部に硬いしこりができて動きを妨げる場合には、それを取り除く手術が行われることがあります。それ以外は、積極的な治療方法がありません。 続きを読む